第13章 反証主義
言葉通り、気色満面の笑みを浮かべたつもりだったのに。
謙信様は微妙な表情で私に手を伸ばし、頬に触れた。
温かな掌に、この頃おかしくなった涙腺がじわり、と滲んで。
こんな時に泣く訳には、と、斜め上に目線を上げると謙信様のそれと交わる。
「…お前は、何も言わんのだな」
暫くそのまま視線を交わした後、謙信様にかけられた言葉。
どういう意味ですか、言いたいことは割と言ってるつもりなのに、と。
聞き返すよりも速く、頬に添えられた謙信様の手指がするり、と首の筋に沿って下がる。
醸し出される雰囲気に、その先を察して体温が上がる。
──するんだ、
帰ってきてから、そんな素振りも見せなかったのに。
前と同じ様に接していると見せかけて、でも確かに存在している柔らかな壁に、阻まれているように思っていたのに。
でもそうか、出立前の景気づけみたいな物なのかも。
私から望んで伊勢姫様の代わりになったのだから、この位は当然あるよね。
ちゃんと努めなきゃ、他ならない謙信様の為なんだから、
──だって、好きなんだから、