第13章 反証主義
──────────
久しぶりに入った謙信様のお部屋は、相変わらず物が少なくて殺風景だ。
そんな中でも、広いだけあってどこからとも無く、ぽんぽんと荷物が出てくる。
手伝えって言われても…ひとまず仕分けしたりたたみ直したり纏めてみたり、なんとなしに手を動かしてみる。
こんな時、彼女なら…
一歩下がって謙信様を立てる、奥ゆかしい伊勢姫様ならどうするのだろう──
何とも自虐的な考えに囚われて、つい下を向いてしまう…
「、何を考えている?」
「あっ、えっと…別に、何も、」
そんな私を見逃してくれない、謙信様の声に愛想笑いで返す。
節度ある距離を保って、なんて決意したばかりなのに…と。
謙信様の優しさが自分勝手に恨みがましくて、また自嘲する。
「そんな湿気た面をされては、士気が下がる。
出がけに見る顔だと言うのに」
「私の顔でも、何かの役に立ちますか?
わーい、光栄です!
他に出来ることがあれば、何なりと仰って下さいね!」