第13章 反証主義
前を歩くニコイチコンビに、聞こえないように。
眉根を顰めたままの信玄様にそっと尋ねる。
「あの、信玄様」
「ん、どうした?」
「伊勢姫様は、どのような方でしたか?」
私の質問に、信玄様は怒ったような、悲しい様な顔をして。
しかし優しいままの声色で、何故そんなことを、と問いかけられる。
「ただの興味本位です。
これから謙信様と接していくにあたって、お手本にしようかなって!」
「…果たして手本になるかどうか。
奥ゆかしくて、一歩下がって謙信を立てる…そんな女子だったよ」
「…わあ、私と正反対な感じですね!」
努めて明るく、満面の笑顔で言ったつもりだったのに。
信玄様の表情は、変わらず曇ったままだった。