第2章 主情主義
「この状況におかれて、よくそんな事が言えたものだ」
冷ややかな目付きに、呆れだろうか。
何か違う感情を含んだ、笑みが混じる。
「お前は、俺が怖くないのか?
突然刀の切っ先を突きつけられて、死への恐怖を感じはしなかったか」
「…だって…
本気で私を殺そうと思えば、寝ている間に幾らでも出来ましたよね」
私の返答に謙信様はぱちり、と瞬きをすると、こちらに向けてふわり、と笑う。
本人には自覚のないらしい、なんとも美しい絵画のような笑み。
「お前と初めて話した時のことを思い出したぞ、佐助。
お前と同郷の人間は皆、こうも無遠慮なのか」
「いえ、そんな事は。
彼女…さんだからではないですか」
「…そうか」