第2章 主情主義
「何を見ている、女」
ちらり、と涼し気な、しかし焔を宿した瞳がこちらを捉える。
今いるここは夢の中ではなくて、さっきの刀は本物なのだ、と…
疑いようのない、迷いのない彼らの言動。
「怖気て、口も聞けないか」
問いかけになんと返したものか、と考えるけれど、待たせれば待たせるほど彼の眉間のシワは深くなっていく。
飾り気がない、きっと偽ったりもしない、悪く言えば配慮のない真っ直ぐな物言い。
あえて質問に質問で返してみたり、小手先で誤魔化す方法ならいくらでもありそうだ、けれど…
ある種の覚悟を決めて、口を開く。
「見蕩れていたから、見ていたんです。
…えっと、謙信様、が、カッコいい…
美しいから」
「…俺がか。妙なことを言う奴だ」
「他の方には、言われませんか?」
「鬼神や軍神等と言われても、美しいと言われた事は無い」
「なら、周りの方は見る目が無いのでしょうね」
正直な人には、正直に接した方がいい。
仲を深めるには、相手と自分の共通点を見出させるのが一番だ――
偽らず、素直に。
ありのままの姿見せちゃうよ、なんてヒットソングの歌詞が頭をよぎる。