第12章 合理主義
「けんしん、さまぁっ」
ここに入ってから、一番の力を振り絞って。
今度こそ、という気合で呼んだ名前はとうとう通じたらしく。
謙信様の動きは止まり、かけられていた重みが和らぐ。
「ん、んぅっ…!!」
振り向こうと身を捩るだけで、指が中に入ったままのそこは如実に快感を拾う。
なんて意地悪なの、でも、そこが好き。
そうしてやっとの思いで、久しぶりに見た謙信様のお顔は、薄明かりの元でゾッとする程美しく。それなのに、なんとも言えない感情に満ち満ちていた。
自分ばかりが乱れているのかと思っていたけれど、情欲が溢れる熱い眼差し。
…もう、それだけで十分だ。
「謙信様、」
さて、このチャンスになんて言おうか。
好きです、なんて狡くて言えない。
やめないで、は捻くれて取られそう。
気持ちいいです、は流石に恥ずかしい。
「…何だ」
あ、返事までかえってきた。
余裕のない声、途中で停めさせた私のせいだろうか?
だとしたら、すっごく嬉しい──
勇気を得たように、覚悟を決めたように…
その実、諦めたように。
深い一息をついて、心に決めた、本心からの口を開く。