第2章 主情主義
「佐助、尋問は済んだか」
低いけれど、よく響く声が聞こえたと同時に。
私でも分かるほど、その場を包む雰囲気が変わった。
そして静寂の中に、キン、と高く澄んだ金属音。
ひやり、と首筋に何か触れる感覚に、そちらに目だけ向けてみると。
肌に触れるか触れないか、そんな間合いに研ぎ澄まされた刃が見える。
驚いて身じろぎでもしようものなら、皮膚が削がれてしまいそうだな、と…あまりの事に、他人事のように状況を観察する。
「謙信様!
まだ話の途中だし、見ての通り彼女は丸腰です。
流石に突然刀を突き付けるのは、如何な物かと」
ふん、と鼻を鳴らし。
佐助の言葉に、意外と素直に彼は刀を鞘に収めた。
「甘い。女など、何処に刃を隠し持っているものとも知れないだろう」
不遜な物言いに、ほんの少しムッとしながら。
振り返った私の視線は、目が合ったそこで凍り付いたように動けなくなった。
金糸のような細やかな髪は、風もないのにさらり、と揺れる。
まるで作り物のように美しい、両で色の違う眼。
肌は雪のように白く、すらりと伸びた手指の先まで透き通っているかのよう。