第11章 現実主義
光秀さんに促され、逸る心を抑えつつ、広間の襖を開ける。
果たしてそこには、想像通りの人がすっと背筋を伸ばして座っていた。
「謙信様っ!!」
思わず、お傍に駆け寄るけれど。
久しぶりに会った謙信様は、想像の中のそれよりずっと険しい表情をしていた。
冷たい、彩りの無い目が刺さるように此方を見据えている。
気圧されながら、隣に座ると。
光秀さんが私たちの向かいに座った。
「これはこれは。
謙信殿自ら、お出でになるとは思ってもみませんでした」
「明智光秀。
此度は俺の預かり知らぬ所とはいえ、面倒をかけた。
非礼を詫びると共に、礼を言う」
謙信様はそう言い、頭を下げる。
私もそれに倣い、頭を下げた。
そこにぽん、と温かく優しい掌…光秀さんがぐり、と私の頭を撫でた。