第11章 現実主義
「殿、失礼」
部屋に入って来るや否や、家臣らしき男の人は光秀さんに何事か耳打ちする。
光秀さんはほんの一瞬、驚いたような顔を見せた。
私のお迎え?でも、それにしては驚きようが半端ない。
迎えが来るのは、光秀さんには分かりきっていたはずなのに…
「…お前の迎えが来たようだ」
私の方を向き直り、そう言った光秀さんはすっかりいつも通りだ。
なら、一瞬の驚き顔は何だったんだろう?
不思議に思いつつ、差し出してくれた手を受け取り、立ち上がる。
光秀さんは私を案内するように、前を立って歩く。
少しは寂しいと思ってくれているのだろうか、時折こちらを気にかけるように、振り向きながら──
「この部屋で待たせている」
「…え、ここですか?」
戦国時代の暮らしも割とそこそこになり。
御殿の中のこともだんだん分かってきた。
客人を通すにも、幾つか部屋には種類がある。
簡単な立ち話なら玄関間で十分。
通してお茶を出す間柄なら、書院造の客間に。
そして広間には、自分よりも目上の人を──