第11章 現実主義
「じきに…?
でも、まだ私が倒れて四日しかたってないんですよね?」
春日山城を出てから安土まで、六日もかかったのに…?
長い道のりを思い返しながら、首を傾げる。
「それは順当に来た場合だろう。
馬は一日に十五里も進めれば良い方だ。
一頭なら、な」
「なるほど…乗り継ぎ?」
「察しが良いな。
昼夜問わず馬を乗り継げば、二日もあれば余裕で辿り着く」
昼夜問わず、か…
迷惑をかけるな、という気持ちと。
果たして自分にそこまでの価値があるのか、という気持ち…
最速今日、最遅十日後くらいで考えておいたらいいや、とハードルを下げる──
「俺は構わんがな、いつまで此処に居ようと」
「まっ…またまたぁ!!」
思考を遮断する、突然の甘い言葉を、思わず間髪入れずに否定する。
光秀さんはいつも通り、どっちつかずの曖昧な表情を浮かべ。
しかし、視線だけは真っ直ぐにこちらを向いている。
どぎまぎと視線を逸らすと、光秀さんは小さく吹き出した。