第11章 現実主義
越後の着物は、柄があっても幾何学柄や文様柄で、お洒落や可愛いとは言い難い。
色合いもどちらかと言うと暗めだ。
ただ、着心地は最高。
そんな事をつらつらと話している間に、女中さん達が目の前の卓に配膳をしていく。
京懐石を思わせる、薄めの色合いに出汁の香りが漂うおかずの数々。
越後は東北だからか、色も味も濃いめだった。
それはそれで勿論、美味しかったけれど…
「それは、越後上布だ。
流石は謙信殿だな、良いものを選ばれる」
「ふぁっ、え?じょう、ふ?」
食事に見とれてしまっていた私に、光秀さんが声をかける。
耳慣れない言葉に首を傾げる私を笑いながら、それでも光秀さんは優しく説明してくれる。
「越後上布。
越後の厳しい真冬に作られると聞く一級品だ。
雪中で撚り、雪中で織りさらすことで、涼やかで丈夫な反物になると」