第11章 現実主義
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「なんだか…色々疲れた…」
漸く、光秀さんと向かい合いお膳の前に腰を下ろした時には…
私は既に疲労困憊の状態だった。
この時代に来て初っ端もそうだったけれど、入浴は自分一人でするものじゃないらしい。
腕、足、髪それぞれに女中さんがついてくれて、それはもう隅から隅まで洗い倒されるのだ。
春日山では佐助くんがいたから、なんとか話を通すことが出来たけれど…
ここで断わったり抗ったりして良いものか、判断がつかずされるがままになってしまった。
「下女の姿から、見違えたな」
「あはは、ありがとうございます!
素敵な着物まで用意してもらっちゃって」
大ぶりの白い花が描かれた、空色地の小袖。
久しぶりのお洒落に気分も上がるという物だ。
「着物一つで、そんなに喜ぶとは。
豪胆な気性をしていても女は女だな」
「だ、だってー!
…越後では、こんなに可愛い柄の着物は見かけないんですよ?」