第10章 【閑話休題】鞠の心【頂き物】
仕事って、人生のすべてといっても過言じゃない。命懸けてる、って言うか……とにかく自分にとってすごく大事なものだし、仕事をもつすべての人がそうなのではないか、って思う。自分のためだったり、守りたい誰かのためだったり。大げさといわれようとも、私はそう信じてる。
信長様だって命懸けてお仕事を遂行しようとしてるし、それを悲願とする周りの皆も同じように命懸けて体張って頑張ってる。信長様のためでもあるし、自分のためでもあるし、守りたい誰かのためでもあるはず。
何かに向かって突き進む彼を無慈悲だと思うこともあった、意味も無く人を斬り殺すのはよくないと思ったし、鷹なんか使って動物を獲るのを楽しむなんて論外だった。鋭い爪に捕まって息絶えたうさぎを抱き締めて、信長様を責めて泣いたこともあった。
けど、鷹狩りをみて泣くこともいつしかなくなった。
人が斬られるところを見ていちいち騒ぐことも。
命を奪う事を受け入れたわけじゃないけれど、
それは彼の仕事であり、アフターファイブであったり、リア充であったりするわけなんだ。
慣れというか、内容は違えども目標とする心づもりは似ているのではないかと気が付いてからは、彼を否定することは無くなった。
誰に褒められるでもないのに志し高く自分を保って突き進む彼が、すごくまぶしく見えて。自分はなんて小さいんだろうって……過去に自分を置いて考えしまう。
主任に褒められたかっただけの私は、いつしか彼に好意を持ってた。
重いもの持ちませんと主張する繊細な指で、共感と肯定しかこぼれてこない言葉で、私をくすぐり、捉えて離さなかった。
でもそのうちに成績が落ちてくると、ちゃんに彼の気持ちが向いていくのがわかって。
ちゃんは主任の言葉に、まるで猫が懐くみたいに……私の目の前で、彼への気持ちを知っておきながら、彼女は彼と視線を合わせて笑ってた。
けどやっぱり、私は笑顔でいた。いい人でいないとならないから。誰に対してじゃない、誰にでも同じ。本性を見せることなんか出来なかった。
私は仕事が出来てそれなりに器量がよくて面倒見のいい社会人……そう、大人だから……ちゃんに全面的に嫉妬してるなんて、ありえないよね。