第2章 主情主義
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ゆるゆると、差し込む光が眩しくて寝返りを打った。
ぎしぎしと身体が軋む、喉もからからだ。
飲み過ぎたらこれだからいけない…そろそろ学んでもいいはずなのに、やめられないからお酒は怖い。
少しずつ覚醒していく意識の中、目を閉じる前の記憶が蘇ってくる。
謎の光と、石碑と、落下していく身体と…
抱き上げてくれた、腕の力強さ。
酩酊した視界に朧気に映ったのは、恐ろしく整った顔立ちだった。
いい夢だったな、どこかで見た俳優さんかな…起きたらググろう。
そう言えば、スマホのアラームが鳴ってないけど今は何時だっけ…
スマホを探して、彷徨う手が触れたのは、ワンルームにあるはずの無い畳の感触だった。
思わず跳ね起きた私は、壁に寄りかかり眠っている一人の男性を見つける。
彼は私の立てた物音にぱっと目を開け、それから眩しげに目を細めた。
「あぁ、起きたんだね。ちょっと待って」
彼は襖をちらり、と開けると水差しと湯呑みの乗った盆をこちらに寄越してくれた。
そこで漸く、私は布団に寝かされていて。
着ていた部屋着はいつの間にか、浴衣に変わっていることに気付く。
ツッコミどころは満載だけれど、酒焼けした喉をまずは潤したくて、お水を一杯貰うことにする。
ごくり、と喉を鳴らして飲み干した私を待って、眼鏡の似合う彼はゆっくりと口を開いた。
「色々不安だろうけれど、俺の説明の前に聞かせて欲しい。
ここに来る前に、君の身に何かあっただろうか」