第8章 懐古主義
「主任っ…鞠さんと連絡は取れないんですか?」
「はぁ?なんで俺が連絡するんだよ。
アイツは無断欠勤してるんだ。
これ以上連絡のない状態か続いたら、自動的に飛ばされるだろ」
「鞠さんはあんなに頑張ってたのに…
どうしてそんなに冷たいんですか!!」
自分のために、お客様のために。
そして、好きな主任に認められたい為に。
あんなに頑張っていたのに、と。
興奮で声が上擦る私を、主任は鼻で笑った。
「そりゃそーだろ。
上司としては、成績を取ってこその可愛い部下だ。
あいつが気持ちよく仕事出来るように、甘やかしてやったのにな…
お前に抜かれそうだなんて泣きついてきやがったから、発破をかけたら自滅したんだよ。
結局アイツもそこらの女と一緒、メンタルは弱かったって事だな」
「…そんな、あんな、恋人みたいなムード出してたのに…?」
「あいつがそう思ってたんなら、公私混同もいい所だな。
身の程は、弁えねぇと…
さて、。
鞠がいない今、お前がこの店の戦力だ」
主任はぽん、と私の頭に手を置き。
そのまま髪をなぞる様に、優しく滑らせた。
──まるで、鞠さんにそうしていたように。
「お前はどうして欲しい?
どうしたらもっと取れるんだ?」
ぞわり、と背筋を悪寒が奔る。
全て、仕事のための振る舞いだったんだ。
鞠さんはあんなに幸せそうに、笑っていたのに──