第8章 懐古主義
「お疲れ様でーす」
主任は私一人じゃ飲みに行かないと漸く気付いてくれたようで、誘われもしない。
そう言えば最近、二人が絡んでいるところも見てないな、と気付く。
私の知らない所で色々あるんだろうな、きっと…
きっとまた元通り、何も変わらない。
だって、今回変わったのは順位一つ。
ただそれだけ、たったそれだけのはず──
斯くして、次の日。
出勤時間になっても、鞠さんは姿を見せなかった。
電話に出ない。
メッセージも未読のままだった。
「主任、鞠さんに何かあったんじゃっ…!!」
「ほっとけほっとけ。お前に抜かれて拗ねてんだよ」
内心、そんなくらいで、と思ったけれど。
声に出すのは憚られて、飲み込む…物事の優越は人によって違うんだ、決めつけちゃいけない。
主任が、何とかするに違いない…
そんな期待も虚しく、次の日も、その次の日も。
鞠さんは仕事に来ず、連絡もつかなかった。