第8章 懐古主義
「…今まで通りで、いて下さい」
愛想笑いを貼り付けて、それだけ返すのがやっとだった。
相変わらず連れないな、と言って主任は笑う。
鞠さんが居なくなっても、彼は何も変わっていない。
本当に、何も無いんだ。
鞠さんは彼にとって、利益をもたらす、駒でしかなかったんだ。
そして、私も…
「まぁ、営業マンの悲しい性ってやつだな。
誰かを蹴落としてしか、自分の居場所は保てないんだよ」
まるで私が追いやったとでも言いたげな主任の言葉に、拳をぎゅっと握り込む。
そういう図式にしたのは、貴方のかけた発破とやらなんでしょう、と言いたい気持ちを抑え。
鞠さんもそう感じているんだろうかと、唇を噛む。
それが彼の、主任という役職が付いた者の仕事だと言うなら。
私のついた、営業という仕事の性質だというなら。
それもそれで、そうなんだろう。
信じた鞠さんが愚かだったんだ、でも──