第8章 懐古主義
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「…そして、。
成約〇件、実利〇百万円、社内月間売上〇位。
店内売上二位だ、よくやったぞ!」
「わーい、ありがとうございます!
主任、鞠さん、お二人のご指導のお陰です!」
そしてあっという間に、今月も最終日を迎え、定例の月次会議が開かれていた。
あれから大きな動きもなく、元々順位なんて分かりきっていた。
たった三人の店舗に響く、小さな拍手。
最終週に入って、今までに増して鞠さんは仕事に打ち込んでいた。
ランチだとか飲みだとかはおろか、ちょっとしたドラマの話でさえできる雰囲気じゃない程。
お客様に見られる仕事だからね、といつも綺麗に纏めていた髪も、最近はバナナクリップで簡単にくるりんぱしてあるだけだった。
でも、きっともうそれも、今日で最後。
月次が終われば全てリセット、またゼロからのスタートなのだから…
「鞠さんっ、あのっ、」
「お先に失礼します」
「あ、お疲れ様でした…」
会議が終わったその瞬間、鞠さんはこちらを振り返ることもなく、退勤していった。
最近ずっと残業だったし、家事とか溜まってるのかな。
「…私も帰ろ」
「おう、おつかれー」