第7章 実利主義
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「わぁ、ほんとに一日もかからなかったねー!」
頑張ってくれたお馬さんを宿屋の厩に入れてやって、青々とした飼葉をてんこ盛りにし。
櫛をかけて、労をねぎらう。
佐助くんは鬣を整えてから、厩の向こうにほんのりと見えていた、巨大な灯りの塊を指さした。
「あれが、目指す安土城」
「へぇ、あれが…でかいね」
「そう、とにかくでかいから気をつけて。
それで…さんには明日、あそこに登城して欲しい」
部屋に戻った私は徐ろに、シンプルな若木色の小袖、それから前掛けを渡される。
「…何の衣装?」
「安土城の、女中衆の来ている着物…制服のようなものかな。
そして、天主まで上がってほしいんだ」
天主。
その名の通り、その城の主がおわす場所…
なんの為にわざわざ、と顔を顰めると、佐助くんは見透かしたように口元を緩めた。
「安土城は、かの有名な織田信長公の居城なんだけれど…
実は、その彼と恋仲にある女性が俺達と同じ。
ワームホールによってタイムスリップしてきた、現代人なんだ」
「…え、えぇえええ!!」