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【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】

第13章 ミステリートレイン


飲みませんよ、と返して透さんを見た。

柔らかな笑顔なのに、威圧されている感じがあって。
…きっと、私は今、来てはいけないところに来た。

零でもなくて、安室さんでもない。
その笑顔とその雰囲気が、私は分からなくて。

「先に戻ってますから、必ず来てくださいね」

逃げる、を選択した。
透さんも後を追いかけるように先輩に挨拶をして、距離を置きながら…後ろを付いてるのがわかり、男女共有個室のトイレに入った。
…鍵を開けた状態で。

無言で開けられる扉。
目があって、携帯で打った文字を見せた。

『あなたは誰』

片手で鍵を閉めて、近づく零。
私の携帯を奪い文字を打つ…

『関わるな』

と見せてきた。
言葉で返さない辺り、…盗聴されてるのだろう。
零の手が、私の頬に触れて…何かを込めるように、強く抱きしめて

『先に出ろ』

画面に見える文字。
時間がない、と言うように背中を押してきて。
この時、もっと、しっかりと、零を見ていれば。
私にわかったのだろうか。
彼が名乗る三つ目の、存在を…


ぼんやり歩いていれば、ここがどこかわからなくなってしまって。
迷ってしまったのかと溜め息をついた。

「あら、貴女…○苗字○○○さん?」

見覚えのある女性。…見覚えがある、というより…

「工藤新一、くんの…お母さん?」

調べてた時に、目に写った美貌を忘れてなかっただけだ。

「あらー、新ちゃんに聞いていた通りね!よかったらお部屋に来ない?今楽しいことしてるの」

勢いに引っ張られて…
知らない男の人が、部屋にいて。

「はじめまして、沖矢昴です」

…初めて会ったその人は、私たちの友人と零に関わる人だとは思っていなくて。

「新ちゃんに知らせておくわね」
「…え、あ、はい」

目の前の不思議な状況に、私は目を奪われた。
工藤新一の母…つまりはあの大女優工藤有希子。
部屋から出て行く様すら、美しくて圧倒された。
残された私を…沖矢さんは、まじまじと観察するように見てきて。

「貴女が、安室くんの?」
「透さんを知ってるんですか?」
「…ええ、少しね」

それより、と沖矢さんが扉をあけて。

「さすが姉妹だな…」

扉の先に見える小さな影は、女の子。

「哀ちゃん…!!」

沖矢さんを怯えるように走って逃げたその姿を、私は追いかけていた。



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