【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第92章 それが例え間違いでも
「あの」
声が震えた。
「……安室さんは、先輩の助手さんで、探偵さんですよね」
ああ、私、また、自分勝手なことを言う。
でもそれを、私は止められない。
今はそれ以外に、安室さんの近くにもう一度いられる理由がないから。
「私の記憶を取り戻す手伝いをしていただけませんか」
探偵・安室透さんへの依頼。
昨日、私はこの人から逃げた。
いや、昨日だけじゃない。自分の中のこの人に向けられる何かが怖くて。
でも、それが、降谷零という名前を知って、自分の中の何かが向けられる先が貴方であることに、気がついて。
「都合の良いことを言ってるのはわかってます。昨日のことも、謝って許されることではないけど。……お願いします」
深く深く、頭を下げた。
お金も持っていない私にできることは、それしかない。
それしか、ない。
「……今、どちらにいらっしゃるんですか。ご飯は食べましたか。ちゃんと、眠られてますか。怪我はありませんか」
安室さんの足先が、私へと向く。
そして、膝をついて、私の顔を覗き込むようにして。
「よかった、……もう一度会えた」
それが例え間違いだとしても。
都合の良すぎる選択だとしても。
「○○」
頬に触れてくる手に愛しさが込み上がる。
体が勝手に動いていた。
それは、本当に、勝手に動いていた。
「……あ、○○?」
安室さんの首に両腕を回し、抱きついていた。
そうしたいと思った。
こうしたかったと思った。
「貴方に、……安室さんに、会いたかったです」
ごめんなさい。
「……イチャつくなら他所でやれ」
「いつもの○○姉ちゃんみたいだね」
顔は見えないけど、後ろから聞こえる声はとても暖かくて。
安室さんの顔を見たくて、体を少しだけ離し顔を合わせた。
家の中で見た、距離を感じるようなものは今はなくて。
だから、呼びたくなった。
口にしたくなった。
「れい」
安室さんにだけ聞こえるようにその名前を呼べば、
「なに?」
甘い、甘い声音と微笑みで返されて、……
「○○、顔が真っ赤だな」
キスがしたい。
浮かんでしまったその欲に、ただただ困惑した。
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