【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第86章 迷い
私への追及は後にすると判断したのだろう。透さんの視線はすぐに沖矢さんへと向かう。
……私の視線は梓さんと透さんが組んでいる腕から目を離せないのだけど。
「先日はどうも…。僕のこと、覚えてますか?」
「えーっとあなたは確か…、宅配業者の方ですよね?」
「え、ええ…まぁ…」
沖矢さんの返しに目を丸くして戸惑った反応を見せる透さんの様子に、少し気持ちが落ち着いた。……ええ、梓さんが私の視線に気が付いて腕を離したからというのも関係あるけれど。
「んじゃ後は大ファン3人でごゆっくり…」
「ホラ、コナン君も帰るよ!」
「あ、ちょっ…」
蘭さんに腕を引かれて連れていかれそうになるコナンくんを引き留めようとする私が動く前に、コナンくんが声をあげた。
「ねぇ梓姉ちゃん!」
「ん?」
「波土さんを好きになったのってやっぱギターが上手なトコだよね? 梓姉ちゃんもギターすっごく上手だし!」
「ええ、もちろんそうよ!」
──違う。
「あれ? 梓さんってギター触った事もないって言ってませんでした?」
「ホラ! この前ウチらのバンドに誘った時に…」
「あ、ああ… あの時は女子高生のバンドに入るのが恥ずかしくて思わず… ゴメンね!」
そんなはずがない。
あのとき、私もその場にいた。
ああ、なんで。
なんですぐ気が付かなかったんだろう。
コナンくんは気が付いていたのに。
この人が、梓さんじゃないってこと。
──私は、赤井さんを失いたくない。
とっさに浮かんがそれにとっさに沖矢さんのほうを振り向いて──……
「やはり波土のベスト1は〝血の箒星〟ですよね?」
「いえいえ僕は〝雪の堕天使〟の方が…」
……談笑している二人がいた。
そこに私が近づくわけにもいかず、コナンくんと目が合って彼が小走りに沖矢さんへと近づいて。
「ねぇねぇ昴さん…」
「?」
沖矢さんの袖を引っ張り、口元を隠し何かを話していた。
私と目が合って、小さく頷く二人に安堵した。
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