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【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】

第86章 迷い


 そう言い出したのは園子さんと蘭さんだった。

「え? 帰っちゃうの!?」
「その方がいいかも…。リハーサル、いつ始まるかわからないから」
「ですね…」
「でも最後のライブのリハーサルなら見た方がいいのでは?」
「私もそう思うんだけど、……せっかくだし」
「昴さんや○○さんには悪いですけど…」
「ウチらそんなにファンじゃないから…」

 それは、驚いた。
 リハーサルに行く予定があると言って誘ってくれたのは二人のほうだったのに。

「え? では、ここに来ようと言い出したのは…」

 沖矢さんも不思議そうに訊ねたその問いに、答えたのは




「僕ですよ」




 背筋が凍るとはまさにこのことだろう。
 聞き間違えるはずのないその声に、聞き間違えであれと願うほどに内心動揺していた。

「ポアロの店で僕が波土さんの大ファンだと話したらリハーサルを見られるように園子さんが手配してくれたんです…。彼の所属するレコード会社に出資しているのが偶然、園子さんの鈴木財閥だったらしくて…」

 零、否、透さんを目視で確認して、聞き間違えではなかった現実と、動揺を悟られないようにするために平常を装うのに必死で、その後ろにいる見慣れた女性に気づいたのは少し遅れてだった。

「あれ? 梓さんも来たんですか?」
「ポアロじゃ興味なさそうにしてたのに…」
「お店じゃ隠してたけど、私も大ファンなの! でね、お店のシフトを終えてここへ向かう安室さんのアトをつけてきちゃったってわけ!」
「っ!?」

 声を上げそうになった。
 『ちゃったってわけ!』の言葉と同時に透さんの腕に己の腕を絡めて腕を組んだ梓さんの姿に。

「驚きましたよ! ここへ入ろうとしたら、彼女に呼び止められて…。まあスタッフに事情を話してなんとか入れてもらいましたけど…」

 どうして。
 どうして、その行為を許すの。
 ──決して、私が問い質すことができないその距離に、嫉妬で頭がおかしくなりそうだった。

「驚いたといえば、あなたたちも来ていたんですね? ○○に、沖矢昴さん」
「びっくりしちゃった! 透さんも波土さんのファンだったんだね。と、透さんには言ってなかったけど、私も波土さんの大ファンで」
「ほー」

 視線が、痛い。
 口早になってしまったあたり、嘘だと見破られてる。


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