【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第86章 迷い
透さんへと目を向ければ、目が合って──、来ても良いと言われた気がした。
それだけで少しは気持ちが落ち着くのも単純なもので。
コナンくんから沖矢さんへと危険性は伝わっているだろうし。
「○○、来られるんでしたら教えてくださればよかったのに」
「うん、……ごめんなさい」
言うつもりだった。
話すタイミングが欲しかった。
でも、それはいつも通りメッセージアプリでのやり取りでも伝えることはできたのだから、伝えなかった言い訳に過ぎない。
──すべては、赤井さんに対しての自分自身の気持ちの迷いのせい。
「○○、どうかしま」
「うわあぁああぁッッ!!!!」
叫び声だった。
振り向けば、そこには会場の査察にきたのであろう消防官の人が、腰を抜かしていて──駆け出していた。
尋常ではないその叫び声は、異常事態を指していることが伝わっていたから。
だから──
「キッ」
会場内、ステージ上。
人が一人いた。
それは、地に足をつけているわけじゃなくて。
「キャアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
首吊りの状態でステージ上に吊るされていた。
園子さんと蘭さんが叫び声をあげ、ダッ、と中へ駆け込んでいったのは透さん、沖矢さん、コナンくん。
行く足を向けなかったのは、透さんが向かったから。
──ベルモットさんが、蘭さんや園子さんに危害を加えない保証がなかった、反射のような警戒心。
「あっ、ちょっ…コナン君!?」
走るコナンくんを止めようと蘭さんも中へと入ろうとしたけど、梓さんの姿をしたベルモットさんが蘭さんの体の前に腕を差し出しそれを止めた。
「ダメよエンジェル…貴方は入ってはダメ…。この血塗られたステージには相応しくないないわ…」
「エ、エンジェル?」
それは、まるで──蘭さんを守ろうとしているように見えてしまって。
「あ、ホラ! 蘭ちゃんって天真爛漫だし♡」
「天使ん…ってダジャレ?」
「とにかく事件の捜査は…彼らに任せましょ…」
……知り合い、なのだろうか。
どこで? どうやって?
コナンくんのことは、知っているのだろうか。
「貴女も。ここにいたほうが懸命だと思うわ」
耳打ちされたその言葉は、……なぜだろう。
了承の意で、小さく頷いた。
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