【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第86章 迷い
突然現れたその男は、雑誌記者・梶谷宏和。
波土さんの周辺を常に嗅ぎまわっている記者だった。
「何だアンタ!?どこから入った!?」
「入口からですよ…。スタッフの一人に金を握らせてこのスタッフジャンパーを手に入れてね…」
そんな簡単に潜入できるなんて、セキュリティの甘さに頭を抱えそうになる。
組織と関係ある人物が、こんなこと許すとは思えない。
「そうそう、美人マネージャーさん? あんたの方の話も決着したんですかい?」
「は、話って?」
「新曲のタイトルになってる〝ASACA〟…実はアレ…波土の新しい女の名前だって噂になってますぜ? んで、長年の浮気相手だったアンタがブチ切れて…あんな出すなって波土と大喧嘩したとか…」
「だ、誰がそんな事… あ、あんただって波土が音楽活動を休止するって記事を他紙にスッパ抜かれて編集長に大目玉くらったそうじゃない!! 15年も波土に張り付いてて何やってんだってね!!」
「だからスタッフのフリまでして…乗り込んで来たんじゃねぇか…。 波土が辞めちまう前に…逆転のでっけー花火を打ち上げてやろうってね…」
まさに、執着。
探偵のそれに通じる何かをわずかに感じつつも、そんなことを零に言っては叱られてしまうと切り替えて。
「そこの君たち! この人部外者だからつまみ出して!」
「え?」
近くにいたスタッフ二名にむかい、円城さんが梶谷を指差して声を上げた。
「お、おい! せっかく金出して入ったんだから取材させろよ!! おいって!!」
声をあげながらも、スタッフに背中を押されて追い出されている姿を見送った。
「じゃあウチらは帰ろっか?」
「そだね…明日、学校だし…」
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