【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第86章 迷い
「えぇ!? リハーサルが見学できない!?」
コナンくんたちと合流した私たちは、早速リハーサルの見学をしたいとマネージャーさんに伝えたところ「できない」と言われてしまい、今に至る。
「マジでー?」
「ごめんなさいね……。実はまだ新曲の歌詞が完成してなくて…、ステージの上で誰もいない客席を眺めながら書くから、2時間、1人にさせてくれって……」
波土さんのマネージャー・円城佳苗さんと名乗ったその女性は、申し訳なさそうに私たち説明を続けた。
「だからバックバンドの人達や他のスタッフさん達も夕食を食べにほとんどで払っちゃってて…」
「こういう事ってよくあるんですか?」
「ええ、タマに…。ライブの直前に歌詞ができてぶっつけ本番で歌った事も…」
「へー…」
アーティストの大変さを私たちは知らない。
簡単に生み出せるわけでもないだろう。特に、期待が大きければ大きいほどどの責務は重たい。
ましてや、今回が引退とまで噂されている。
それが事実にしても偽りにしても、私の想像を超えるプレッシャーだろう。
「まあ彼の好きにさせてあげましょう…。彼にとって今回のライブが…最後のようですから…」
でかっ!
突然後ろから話を始めた声に振り替えれば、見上げるほどの身長に思わず思ってしまったことについては、口に出さなかっただけよしとする。
その方は、波土さんを調べているときに関係者として認識をしていたから知っていた。
布施億康。レコード会社社長だ。
沖矢さんでも見上げる形になる布施さんの体格は、調査不足だったかもしれない。
「さ、最後って…」
「波土さんが引退するって噂マジだったの!?」
「えぇ…、何度も止めたんだが…。明日のライブのラストでファンに伝えるそうだ…」
そんな話を私たちが聞いても良かったのだろうか。
本当のファンに対して、少なからず罪悪感を覚える私に、沖矢さんはくすっ、と小さく笑ったのを見逃しはしなかった。
「どうしてもというのなら、裁判沙汰にして法外な違約金をふんだくってやるって…息まいてたというのに。まあ、引退するのは他のレコード会社に移籍するための口実だろうって憶測も飛んでましたしねぇ…」
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