第85章 I kiss you

「でもそのタイトルって変わってるんだよね？」
「変わってるとは？」
「アルファベット表記でネットに発表されたんだけど…『アサカ』の『カ』の字が…『KA』じゃなくて『CA』でさー…」

　KAが、CA

「ねぇなんで！？　なんで『KA』が『CA』なの！？」
「さ、さぁ…」
「絶対何か理由があるはずだよ！！　思い当たらない！？」

　コナンくんが、園子さんに勢いよく質問をしていた。
　それは、不安を的中させるような剣幕だった。
　赤井さんと、コナンくん。
　二人で追っているものなんて──限られているから。

「そんなに知りたいなら本人に聞けば？　今度ウチら、その波土禄道のライブの前日のリハーサルを見学に行くから、連れてってあげるよ…」
「少しぐらいならお話できるかもね！」
「ホ、ホント！？」

　リハーサル、…ってことは、園子さんの、鈴木財閥が関連している。

「よろしければそのリハーサル、私も見学してよろしいでしょうか？」
「あ、の！　私も！　私も行きたいです！！」
「え？　昴さんと○○さんも？」
「「波土禄道の大ファンなので！」」
「はい！　喜んで♡」

　イケメンってずるい。
　園子さんに顔を近づけた沖矢さんに即返事で返す園子さんに、少しだけもやっとしてしまうのは……

「ちなみに、ネットにそのタイトルが発表されたのはいつ頃ですか？」
「つい先週だけど…」
「5年ぶりの新曲だから、ネットのニュース上位になってて」

　私も、今日見たばかりで。
　……関わってはいけないとわかっているのに、知らないところで零が危ない目に遭うのは我慢できない。

　そう。
　それだけの、気持ちなんだ。
　
　それだけの、気持ちでないといけないのに。

　唇に触れる熱が、まだ残っているように感じた。



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