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【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】

第85章 I kiss you


「新一兄ちゃんのお家、片づけ手伝ってほしいって僕らも行くことになってるんだ」
「〝僕ら〟?」
「うんっ! 蘭姉ちゃんと、園子姉ちゃん!」

 ……逡巡した。
 でも、確かに通信機は返さないといけないわけで。
 蘭さんや園子さんがいるなら、……拗れるようなことにはならないだろうし。

「わかった。……でも、早めに帰るからね」
「うんっ! 僕、準備してくる!」
「あ、ついでに先輩起こしてきてもらえる?」
「はあいっ!」

 遅くはなるつもりはないけど、……一応、透さんに連絡と思い、一つメールを送った。

『蘭さんたちと出かけるから、帰りが少し遅くなるかもしれない』

 それからすぐに、帰ってきたのは『了解。』と──『今日は帰れないかもしれない』の文字。
 組織のほうだろう。
 直感でなんとなくそう思った。
 先日も夜遅くに帰ってきたとき、明らかに女性ものの香水の匂いがして、ベルモットさんだなって思ったけど。
 零は、本当に組織と私を関わらせないようにしている。
 ……いや、まあ、ベルモットさんにもコナンくんたちにもFBIにも、私がただの『○苗字○○○』だということはバレているわけで。
 私が手放せなかったもののために、零には余計な負担をかけてしまってる。だから、零の荷物にはならないためにも。余計な心配をかけないようにするために。
 もちろん、風見さんたち──仲間の邪魔にもならないように。

「○○姉ちゃん! お待たせ!!」
「おー、○○、悪かったな。ぐっすり寝てた」
「いいえ、問題ありませんよ。まったく電話が鳴らなかったので♡」
「言葉にとげがあるぞお前」

 大事な人たちから離れないためにも。

「ふふっ、じゃあ、行ってきますね」
「ああ、またな」
「はい、また。お先です!」

 コナンくんに手を握られて、引っ張られるように歩く道のり。
 沖矢さんが住まれている工藤家までの道のり。

「最近、安室さんポアロに出勤すること多いね?」
「えー、そうかなあ」

 この子相手に、私はどこまで口を閉ざすことができるか。
 それはそれで、別の問題が発生していることに気づいたときには時すでに遅かった。



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