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【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】

第84章 幸せな我儘 ※裏


 朝が来て、目が覚める。
 陽も昇りきらない朝5時。 
 瞼をとじたまま、手探りで温もりを求めれば、握り返されてくすりと笑う気配に頬が緩む。

「おはようございます、お姫様」
「……おはよう、透さん」

 瞼を薄く開き、れーい、と口の動きだけで伝えれば「おはよう」と口の動きだけでまた返される。
 強請るように唇を近づければ、ふっと笑いを含みながら重なる唇。
 首に腕を回して口付けがしやすいように首を少しだけ傾けて。

「どうした?」

 応えてくれるとばかり思っていた口付けは、寸前で止められる。

「おはようのキスがしたかった」
「それはしたじゃないですか。……こーら、欲求不満そうな顔しない」

 ごめんな、と小さな謝罪と共に額に落とされる口付け。

「○○の寝顔見てたら、つられて寝てしまったせいで仕事が残ってるので」
「ふーん」
「一時間で終わらせます。……朝食作って貰えますか? 一緒に食べて、それから少しだけなら」

 時間が作れます、と。 喜々と顔をあげた私に零は「俺だってシたいんだ」って顔に書いてるものだから、思わず笑ってしまって。

「あ、透さん」
「はい」
「髪伸びたね」
「……ああ、そういえば。最近切ってませんでしたね」

 零の前髪に触れながら顔を近づけて、もう一度だけキス。
 リップ音が立つような、触れるだけの可愛らしいキス。

「~っ、○○!」
「あははっ!」

 ベッドから体を起こし逃げようとした私の腰を、乱暴に掴んではベッドに引き戻される。
 布団を頭から被って、視界のすべてが零で満たされる。

「僕、時間がないんですよね」
「ええ、〝忙しい〟もんね」

 押し倒されて、見下ろされて。
 この世界に零しかいないような錯覚になる、幸せな空間で。
 指を絡めるように両手を重ねた。

「○○は悪い子だ」

 慈しむように頬を擦り寄せて、瞼に口付けられて。

「……触って?」
「どこを?」
「~っ、れ、い」
「ん?」

 零にも聞こえるか分からないくらい小さな声すら、聴き逃さない。
 耳を口元に近づけて、「言って」と囁いてくる。

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