【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第83章 大切な友人(そんざい)
〝俺がいる〟
零の力強い言葉が、胸にすとんと落ちる。
「俺には、お前がいる」
悲しいことを悲しいと、嬉しいことを嬉しいと……共有できる相手がいることが。
一人になったと思ってた。
人と関わりたくないとすら思った。
大好きで、大切で、大事で、特別な存在だったからこそ。
「零が、すき」
「俺は愛してる」
くすり、と小さく笑った零と目が合えば、唇が重なった。
落ち着いた、静かな口付け。
零が口付けをしたまま私を抱き上げてベッドへと運ぶ。首の後ろに腕を回せば唇が薄く開いて舌先が触れ合う。
「…いいの?」
「しないのか?」
「だってさっき、…いやかなって」
「それはさっきのお前が」
ぽすん、とベッドに寝かされて零が私を跨いで見下ろす。
「俺を他の男を忘れるために利用しようとしたからだ」
「……ヒロくんを忘れることはしないよ」
「ベッドの上で他の男の名前を言うなんていい度胸だな?」
冗談を含む声に変わって、零の口角が意地悪に歪む。
ああ、好きだなって思うから本当に末期だ。
私には、零がいて。
零には、私がいる。
この先ずっと離れない誓いのような言葉。
忘れることはしない。
ヒロくんのことだけじゃない。
みんなのことを。
零と出会って、零と付き合って、別れて、再会して――
「全部、忘れない」
「……抱く気失せた」
「えー」
くすくす笑い合えば、零が額に、頬に、瞼に、鼻の先に、いくつもキスの雨を落とす。
「抱く気失せたんだじゃないの?」
「可愛すぎて抱く気失せたんだ」
「なにそれ」
零が笑う。
その笑顔を見て、零が一人じゃなくてよかったって……私がいて良かったって、心から思ってしまう。
いつかちゃんと話さないといけない日がくる。
その時に、零の隣には私がいたい。
この人を、絶対に、一人にしない。
「零、大好きだよ」
「俺は愛してる」
さっきと同じ返しをする零が笑って。
ご飯を食べて、二人でお風呂に入って……心が温まる気持ちで、眠りについた。
――だから、のんきに眠っている私は気づかなかったんだ。
零が、眠る時間を削って、今も〝赤井秀一〟について調べていたことを。
そして、……一度は別人だと納得した沖矢さんの存在へとたどり着くのも。
そう、遠くはない未来だということを。