【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第83章 大切な友人(そんざい)
透さんの家が見えるまで、足早に歩いていた私を零が隣に並びながら何度も心配そうな顔をさせていたことに気づかなかったわけじゃない。
外で触れてしまえば泣いてしまいそうだったから、笑顔を張り付けてはいたけど、その顔を見れば誤魔化せていないことは自覚する。
アパートに戻り、扉を閉めた零に、くるりと振り返って口付けた。
零の両頬に手を添えて、舌を差し込もうとすれば、口を閉じて開いてくれない。
もどかしい。
消したい。
誤魔化させてほしい。
なのに、困ったような顔で零が見下ろしてくる。
「な、んでぇ……っ」
なんで誤魔化させてくれないの。流されてくれないの。なんでなんで
「○○に、先に話しておくべきだったな」
ごめんな、と言われて。違うって思ったけど。優しい手が頭に乗せられてしまえば、涙が溢れ出す。
苦しい。
零のことが、大好きなのに。
一瞬でも過ぎってしまった考えが、悲しくて。
そんなことを思ってしまった自分が、嫌で。
零が、と思って黙っていた。
ずっと、ずっと、そのはずだった。
赤井さんに話を聞いて、聞かせちゃいけないと思った。
でも、本当は違うのかもしれない。
全部、私が嫌だったから。
私が、これ以上私自身を嫌になりたくなかったから。
そう思ってしまったら、頭の中がぐちゃぐちゃになる。
「○○?」
「くるしいよ、零……っ」
苦しい。苦しくてたまらない。
零以外の人から、ヒロくんのことは聞きたくない。
ーーそれだけじゃなくて。
ヒロくんを知らない人からヒロくんの話を聞くのが、言葉にならない感情で思考がおかしくなりそうで、胸が苦しくて。
「よしよし」
困った声で。
子供をあやすように。
「……なに、この手」
「キスやセックスより、こっちのほうがいいだろうなと」
零の大きな手が、頭を撫でる。
小さな子供をあやすように。
「大丈夫だ、俺がいる」
零が、額にそっと口付けを落とした。
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