【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第83章 大切な友人(そんざい)
しばらく響いていた声が落ち着いてから、透さんたちが戻ってきて、事件の概要を世良さんが説明した。
誤解から招いたその事件。
「ウソ…あのキーボードの女の人が犯人なの?」
犯人がキーボード担当の女性だったという話を聞き、蘭さんと園子さんが驚きながら話をしている。
その後ろに立つ透さんの隣に立てば「大丈夫ですか」と体調を気にしてくれて、小さく頷いた。透さんのシャツの裾を掴めば、ふっと柔らかく笑みを向けられる。
……今は、それだけで少しだけ気持ちが落ち着く。
「でもすごいよ、世良ちゃん!またまた事件解決しちゃって!」
「そうか?」
「まぁ、安室さんや…コナン君が協力してくれたからこれぐらい楽勝さ!」
「さすがJK探偵♡」
笑顔を張り付けているけど、限界が近い。
今は早く帰りたいなんて過ぎってしまう己が情けない。
「ま、ボクが探偵をやってるのは…兄の影響だけどね!」
「それって赤女事件のときに話してた頭の切れるお兄さん?」
「いや、それは真ん中の兄!影響を受けたのは一番上の兄だよ!」
透さんとコナンくんの目つきが変わったのは、世良さんの話題に家族の話が上がったからだった。
……胸が、ざわつく。
「一番上のお兄さんって確か亡くなったんじゃ…」
「まさか刑事で殉職しちゃったとか?」
「ああ…でも日本の刑事じゃなくて、連邦捜査局…FBIのエージェントだけどな!」
自慢げに笑う世良さんに、それは確信へと変わっていく。
「グリーンカード取るの大変だったらしいよ」
「だからお兄さんアメリカに行ってたんだね…」
「ねぇ…その人の名前って」
「赤井秀一っていうんだ!カッコイイだろ!」
――ああ、聞きたくなかったと思うのは我儘だろうか。
透さんの世良さんに接する態度への違和感の正体。
「でもそのお兄さん、日本の駅のホームで見かけたんだよね?」
「ああ…だからビックリしたのさ!」
「じゃあアンタにベースを教えてくれた男の人もFBIだったりして…」
「まさか…兄が休暇で日本に帰った時に会った友人じゃないか?」
違う、彼は――
警視庁公安部潜入捜査官
諸伏景光
友人の笑顔が蘇って、胸が締め付けられて――
隣にいる透さんの顔を見れば、腕を組み目の奥に静かな怒りを宿していた。
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