【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第83章 大切な友人(そんざい)
「ごめん」
繋いだ手を払ったのは、泣きそうだったから。
今触れたら、抱きついて抱きしめてほしいとせがみそうだったから。
「その人の名前聞いた?」
「…聞いてないけど、そのホームに来た別の連れの男がその人のことをこう呼んでたよ」
〝スコッチ〟
「ってね」
胸が苦しくて。
こんな気持ちを、零は一人でずっと抱えていたのだろうか。
困ったような表情をさせてしまっては俯いてしまう。
「が、外国の人?」
「どっからどう見ても日本人だっから…あだ名なんじゃないか?でもさ…彼をそう呼んだその男…帽子を目深に被ってたから顔はよく見えなかったけど…似てる気がするんだよね…安室さん、アンタにな!!」
キリッ、と言い放つ世良さんの言葉に握りしめる手に力が入って。
「人違いですよ」
さらっと交わす零の言葉に、我に返る。
感情的になっていた。
「そんな昔話より、今、ここで起きた事件を解決しませんか?君も探偵なんだよね?」
「ああ…そうだな…」
そうだ。そう。今この場で、感情的になるべきじゃない。
「透さん、私」
「体調優れないですよね。受付でゆっくりされてください」
「うん、ごめんなさい」
ありがとう、と呟くような声に背中をぽん、と叩かれる。
「○○さん、大丈夫ですか?」
「私たちも一緒にいますよ!」
推理は探偵たちに任せて、と蘭さんと園子さんが私の両腕に寄り添ってきて。
「……あったかい」
当たり前に、生きてる。
ヒロくんはいないのに。
さっきまで生きていた人が、こんな風に亡くなってしまう。
「○○さん?」
「えっ、泣いてる!?」
考えたくない。
零が抱えていた気持ちを考えると、考えたくないのに。
赤井さんから聞いた話が浮かんでしまって。
あの時、零が向かわなかったら。
そう、過ってしまった己が、苦しくて、憎くて、情けなくて、痛かった。
「大丈夫、泣いてないですよ」
休憩所で腰を下ろしたところで、顔を上げて笑顔を浮かべた。よかった、と安堵の笑みを浮かべた二人に笑い返した。……気を抜いてはいけない。
「月のモノで、痛くて」
分かります、と声が上がって心配をかけたことに罪悪感を抱いた。
透さんたちの推理が終わるまでと会話を交わしている時間。
それから
「うわあああああああ」
長い時間、誰かの絶叫がこだました。
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