【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第83章 大切な友人(そんざい)
4年前。
私は、ヒロくんとどんな会話をしていただろう。
「驚いたよ…アメリカに行ってると思ってたし…秀兄が音楽やってるところなんか見たことなかったし。んで、ボクその時友達と映画観た帰りだったんだけど、走って秀兄と同じ電車に飛び乗ったんだ!どうしても秀兄のギターが聴きたくってね」
ヒロくんと、あの冬に会う約束をして…でも、叶わなくて。
「へー…」
「それでそれで?」
零のことばかり考えていた私を、忘れられない私の話を受け止めてくれた彼と、世良さんは会ってるんだ。
「何度か乗り換えた駅のホームで秀兄に見つかっちゃって…「帰れ」って怒られたんだけど…お金もない帰り方もわからないって言ったら…「切符買ってやるから待ってろ」ってボクをホームに残して行っちゃったんだ…ホントは中学生だから、お金もあったし帰り方もわかってたんだけど…秀兄にとって、ボクはまだまだ子供だったんだと思ったよ…」
「それで?言われた通り待ってたの?」
「ああ、泣きそうな気分でね…でもさ…その時、秀兄の連れの男が…」
君…音楽好きか?
「――って言って、ケースからベースを出してさ…ボクに教えてくれたんだ…ドレミの弾き方をね…」
私は、笑えてるだろうか。
足が僅かに震えて、視界が歪み始めた。
……目頭が、熱い。
「じゃあ、さっき言ってたベースを教えてくれた人って」
「その人なの?」
「ああ…10分ぐらいの間だけだけどね」
羨ましい。
そう、思ってしまったから。
「だったらその人お兄さんの音楽仲間だったんじゃない?」
「それはどうかなぁ?その人がベースを入れてたのは、ソフトケースなのに…ベースを取り出しても形が崩れずピンとたったままだったから…もしかしたらベースはカムフラージュで、別の硬い何かが入っていたのかも…」
知ってる。
知らなくても、私は分かってしまった。
ヒロくん。
その名前を口にすることも、今は零にしがみついて泣くこともできないのに。
「○○」
震えそうになる私の手を零が握りしめた。
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