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【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】

第83章 大切な友人(そんざい)


「何ィ!?凶器が見つからない!?」

駆けつけた警察、目暮警部の声がフロア内に響く。
先ほどまで隣にいた女性は、あの場を後にして…亡くなっていたのだ。
その後すぐに確認した防犯カメラは、映像の半分…特に彼女が亡くなっていたドラムの部分は黒く見えなくなっていた。
自分たちの演奏を録画するために、携帯電話をセットした自撮り棒をマイクスタンドにつけたせいで、誰が彼女を殺したか分からなくなったというわけだ。
その上、鏡ばりになっている壁も被害者が感想に集中したいからってカーテンを閉め切った。
警察は絞殺したヒモ状の凶器を探していたが、それが見つからないと声をあげたのだ。

「隅から隅まで探したのかね!?」
「ええ…スタジオ内からトイレの排水口の中まで…」
「死亡推定時刻は、ちょうどあの3人が被害者を起こしにスタジオに入った頃だし…この店の出入り口の防犯カメラによると、あの3人は外へ出ていない…ボディーチェックしても出て来なかった。ということは、必ずここのどこかにあるはずだ! もっと念入りに探せ!!」
「は、はい!!」

透さんの横に並び、その様子を見つめる。

「何か分かりました?」
「ん?いや、まだですよ」

ぽん、と頭に乗せられた手。
透さんを見上げれば、大丈夫、と口元が動くから頷き返せばすぐに手が離れてしまった。
……寂しいと思うのは、今じゃないと自分に言い聞かせて。
受付で他のスタジオを使っていたであろうギターケースを持った男な人が何かあったのか、店員に尋ねていた。
世良さんがその様子をじっと見つめていて。

「どうしたの?世良ちゃん」
「あの人たち怪しんでるの?」
「あ、いや…ギターケースを背負ってる人を見ると、思い出しちゃうんだ…」

そう、彼女は明るく懐かしむように口にする。

「4年前、駅の向こう側のプラットホームにたたずむ…ギターケースを背負った秀兄をな!!」

シュウ。
――名前を。

赤井さんの顔が脳裏に過ぎって、体が固まった。
気づかなかった。
その可能性を考えなかった。

でも、確かに似ている。

そう考えれば納得してしまう程には。

まさか、でも。

深く俯いてしまうのは、拭えきれない後ろめたさ。
隣に立つ透さんの顔を、見ることができなくなった。


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