第83章 大切な友人（そんざい）

思わずそちらの方に視線を向ければ、4人組の女性バンドなんだろう。ライブに向けて練習をして、意見がぶつかってるのか。
なんだかギスギスした様子で、気まずい。
頭を冷やして、と言った女性が1人スタジオで仮眠すると言って席を立てば、少しだけ落ち着いたのか3人で話をしていた。
誰かの、追悼ライブだとか。
……話を聞いてる限り友人だろうか。

「○○」
「あっ、はいっ」
「曲、決めますよ」

ちゃんと話を聞いてください、と透さんに言われて我にかえる。
なんとなく気になってしまう隣は、スタジオに戻るようで先を立ち休憩所を出る。

「では…曲は沖野ヨーコさんの「ダンディライオン」だとして…誰がボーカルをやるんですか？」
「「「え？」」」

透さんの質問に対して、3人がきょとんと目を丸めた。

「そ、園子だよね？」
「私は2つのことを同時にできない人だから…世良ちゃん歌う？」
「ボクは遠慮しとくよ」

あらら、決まってなかったんだ、なんて思うけど確かにさっきの話からして決まってる様子はないわけで。

「君の彼氏の新一君はどうなんだ？」
「え？」
「彼ならギターも弾けるんじゃないか？」

閃いた、と言わんばかりの世良さんの言葉に蘭さんは少し頬を染める。

「し、新一はヴァイオリンは弾けるけど…ギターはどう…かな？　歌はコナン君並みに…ねぇ…」

ねぇ、と向けられた視線の先のコナンくん。
苦笑いを浮かべてるけど、その顔には悪かったな、と書いてあるようで。

「コナンくん、歌苦手なんだ？」
「別に。得意じゃないだけだよ」

むすっ、とコナンくんがわざとらしく膨らました頬を指でつついていれば

「きゃあああああああああああ」

建物に響き渡るような悲鳴に、全員の顔色が変わる。

「この悲鳴…さっきのバンドの人たちじゃないか！？」
「上のスタジオからですね…」
「何かあったのかな」
「○○たちはそこにいてください、僕らは様子を見てきます」

僕ら、と言って階段を駆け上るのは透さんと世良さん、それからコナンくん。

「さっき3人で上に上がってったけど…」
「何かあったのかなぁ？」
「……大丈夫だよ、きっと」

不安げな表情を浮かべた園子さんと蘭さんに、休憩所で待ちましょうと笑いかけた。


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