【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第83章 大切な友人(そんざい)
その日、探偵事務所のお仕事の終わりにいつも通りにポアロへ足を向けた。
いつも通りだった。
「いらっしゃいま…○○さん!お疲れ様です!」
「梓さんも、お疲れ様です。席空いてる?」
「はいっ!いつものとこですよね」
お願い、と返しながらいつものとことカウンターの椅子を引いて貰えばカウンターの中で透さんが笑っていた。
「お疲れ様、○○」
「…透さんもお疲れ様」
「何か召し上がりますか?良かったら甘いものでも」
「透さんにお任せします」
承知しました、と笑っている透さんの顔には私も頬が緩んだ。
一緒に暮らすようになって、透さんと呼ぶことが増えた。
…否、安室透と過ごす時間が増えたとも言える。
零はこれまで、私といる時間を、私の前で“零”である時間を大事にしていたのだとわかったのはそのおかげ。
バーボンも、安室透も、零の一部だとしても…別人のように感じる怖さは今も感じるときがある。
「バンドだよバンド!!」
ウチら三人で、と女子高生の話し声がお店に響く。
「バンドかぁ」
バンドというほどの記憶ではないけど、零やヒロくんが私に教えてくれたギターとベース。
ほんの少しの知識でキーボードに触れて、みんなで騒いだあの頃。
用意された珈琲を口にしながら、思い出に浸りーー…
「ギターいた!!」
誰かを指すような声に、ビクッと背筋が震えた。
振り返れば、見慣れた顔が4人。
コナンくん、蘭さん、園子さんに……確かあの子は、世良さん。
「え?」
園子さんが指差す先には、梓さん。
自分じゃなくて良かった、と肩の力を抜きながら私に気づいていないであろうその後ろの会話に耳を向けた。
「その女子高生バンドにも梓っていうギターの上手い子がいたんだよねー!!」
ミーハーというか、なんというか。
高校生くらいの時は、そういう映画にすぐ影響を受ける。
それはなんとなく私にも覚えがあって聞こえないように小さく笑ってしまう。
「で、でも…」
ギターやったことないし高校生でもないと言葉を続ける梓さんの言葉にうんうんと、同意する。
私も同じことを言われたら同じ反応をしてしまうだろう。
→