【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第81章 僕に
「あ、僕そろそろ」
「私も先に事務所戻ってますね」
洗い物も終えて、透さんがポアロに戻ると立ち上がった。
「一服終えたら行くから先行ってろ」
「はーい」
階段を先に下りる透さんの服を掴んだ。
「…透さん、ちゅーして」
「え?」
「どうせ、自分に巻き込まなかったらこんな風な普通の幸せを〜とか思ってそうだからちゅーして」
「……ふっ、どうしてキスじゃなくてちゅーなんですか?」
「軽いキスがしたかったから」
「深くなくて…良いんですか?」
「深いのは、…お仕事終わったらしたい」
顎を掴まれて、唇を重ねた。
触れるだけの軽い口付けに、頬が緩む。
「○○に見透かされるのは、心地良いですね」
「さっきのは分かりやすかった」
行ってきます、と囁かれて頷いた。
頬が緩む。
零のそばにいることが、気持ちを落ち着かせる。
「…人前でいちゃつくのもほどほどにしろよ」
「先輩」
大丈夫です、先輩の前でしかしませんと心の中で返して笑って誤魔化す。
夕方前にそろそろ帰ると告げてポアロへ向かった。
「いらっしゃいませ…って、○○。早かったですね」
「うん、今日お仕事で来てるわけじゃないから」
「○○さんだ!お疲れ様です」
「あーずささん!お疲れ様」
わー、とテンション高めに挨拶した。
元気ですね、と透さんに言われてカウンター席に座る。
「すっかり特等席ですね」
「え?」
「その席」
端から三番目。
「…考えてみたら毎回同じとこ座ってる」
「カウンターがよく見えるからだと思ってました」
安室さんが、ですね。と耳打ちで訂正されて顔が赤くなる。
「…それも、そうですけど」
否定はしない。
早くポアロ終わってくれないかなぁなんて肘をつきながら透さんを、眺めれば笑顔を返される。
…零とは違う笑顔。たまに本気で浮気してる気持ちになるから困る。
いや、全部零なんだけど。
だから、はやくその顔を剥がして零に触れたい。
「あーー!!○○さん!!」
カランカラン、と音がして開く扉。
「あれ、蘭さん」
「最近会えなかったから心配したんですよ!!入院してたことも、父から聞きましたけど!」
がしっ、と手を掴まれて…罪悪感。
やっと会えた、と言った蘭さんの目尻には…少しだけ涙が浮かんでいた。
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