【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第79章 俺のために
「っ…それは、無理」
嫌だ。
嫌だ。
嫌だ。
「零と出会ったことをなかったことにするのも、みんなと出会ったことなかったことにするのも…っ」
「お前がいなくなるわけじゃない!」
手首を押さえつけられて。
真っ直ぐなその目で見つめられる。
「お前が壊れることもない!」
「零がいない世界に私は生きていけないッ」
「それでも」
「零がいない世界が嫌だ」
「っ…お前が苦しむ現状に俺は…耐え切れない」
必ず迎えに行くから、と零が繰り返す。
貴方が私のためにしてくれたいろんなこと。
職歴の改ざんも全部…全部、水の泡になる。
「お前が傍にいると…」
「足手まとい」
そんなの知ってる。
「足手まといで貴方を振り回して、迷惑ばかりかけて」
それでも傍においてくれた。
「だけど……零のいない世界は、みんなのいない世界は…空っぽなんだよ…?」
「あの時と違う…愛してる……愛し続ける」
愛してるから。
必ず迎えに行くから。
「そしたら○○は、世界で俺だけのものにもなれる」
この人は、私が喜ぶことを知っているから厄介だ。
「考えて」
「……考えるから、…そばにいて」
「そばにいる。でも…そんなに時間は与えられない」
この人は明日にでも私をこの場所から…離れさせたいのだ。
本当は、別れを言わせるために先輩に会わせてくれたんだ。
優しい手つきで体に触れて…壊れ物を扱うかのように抱き合う。
零のことを思うなら私は離れるべきなんだろう。
でも…
「愛してる」
泣きそうなこの人を、一人にしたくない。
私も…この人から、離れたくない。
私を大事にしてくれるみんなから…離れたくない。
そのいつかくる日のために今離れないといけないとしたら…
「愛してる、零」
殺して欲しいと思うくらい、貴方が好きで。
私は貴方と出会った私を、捨てたくはない。
「あぁ…」
零はもう一度、優しく…丁寧に、私を抱いた。
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