【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第79章 俺のために
透さんはその日ポアロを早退した。
梓さんは泣きじゃくる私を見て心底心配してくれた。
車に連れられて、泣き続ける私に透さんはキスをして…落ち着かせるように髪を撫でた。
零が私の家に送って抱きしめられて…ベッドに寝かされた。
涙は止まらなかった。
息ができないほど泣いて…
そして、…抱かれた。
泣きやまない私を慰めるように。
優しく、優しく抱いてくれた。
「…落ち着いたか?」
ベッドで私に腕枕をしながら、零が私の顔を見る。
「………うん、ごめん」
「…久しぶりにシたのに、お前の中には…俺以外がいるな」
「え?」
「毛利先生…、お前にとって、あいつらと同じくらい大事なんだろ?」
あいつら。
それは、…警察学校時代の、みんなのこと。
ヒロくん、伊達さん、松田さん、萩原さん…
「……○○、俺から頼みがあるんだ」
肌を重ねるように、抱きしめてきた。
「ん?…なに?」
耳朶にキスをしてくる零は、とても甘くて。
「○○…俺のために死んでくれないか」
でも、その口から出たのはとてもとても…受け入れられない言葉だった。
強張る体を零が強く抱きしめてくるから…零は、何かを決意してるのかが伝わって。それは間違いなく…私のせいで。
「零が殺してくれるならいつでも喜んで」
だから、私が言えるのはそれしかなかった。
零の温かい腕の中。
その中で死ねるなら、私は……
『○○、帰ってこいよ』
先輩の声を思い出す。
先輩に会いたい。
もう一度。
蘭さんに、梓さんに、コナンくんに、探偵団のみんなに…赤井さんに。
「……嘘つくなよ」
「嘘じゃない…零が、殺してくれるなら…それで良いよ」
嘘じゃないのに。
視界が歪んで…涙が溢れた。
貴方の邪魔になりたくはないから。
貴方がいらないというなら、私は。
「っ……違う、そうじゃなくて」
言葉を選ぶように、零の腕が私を強く抱きしめる。
「名前も変えて、戸籍も変えて」
命を失うよりも怖いことがある。
それは…零を失うこと。
「いつか必ず迎えに行くから」
○苗字○○○を、この世界から…
「俺のために、死んでくれないか」
優しい口付け。
痛いくらい、優しい口付けだった。
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