• テキストサイズ

【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】

第79章 俺のために


朝が来て。
病室じゃないことへ少しだけ違和感。
久しぶりに冷蔵庫を開けば、空っぽで。
何もしなくても朝食が用意されていた病室や零との生活が、…なんだか、違和感で。
違和感だらけで。

「…変なことに、慣れかけてたな」

いつまでも同棲できるわけじゃない。
いつまでも、誰かがそばにいてくれるわけじゃない。
いつまでも…

「………あれ」

なんで、私は……諦めてるんだ。
なんで
涙が、出るんだろう。
私はどこかで零が決意していたことに気づいていたのかもしれない。
零が………なんて、考えたくない。
もう、やめて。
早く抱かれて落ち着きたい。
大丈夫。
零がいれば大丈夫…の、はずだった。
私は、私を支えてくれる世界に気づいていなかった。
先輩ご家族のことや、コナンくんや…赤井さん。
私はきっと、伊達さんが死んだ日から零と出会う日まで時間が止まっている気がしたんだ。
止まってなんてなかった。
進んでいた。

だから、零から言われた言葉を受け入れられなかった。


「俺のために死んでくれないか」


零が、私にその日言ったこと。
ポアロに行って、零…透さんの休憩時間に探偵事務所に行って、久しぶりに先輩の顔を見た。
私はあの日、東都水族館にいて怪我をしたことになっていた。
嘘ではない。
だから、先輩は私を見て…抱きしめて来た。
先輩に抱きしめられたのが初めてで、それはまるで家族のように優しくて暖かくて。

「○○…どれだけ心配したと思ってんだ」
「…っ、ごめんなさい…」
「連絡しろ…病院にいたことも、安室くんに聞いて知ったんだからな」
「ごめんなさい…っ、ごめんなさい、先輩っ」

何度も病院に来たのだと。
それでも、私に会えなくて帰ったと。
蘭さんもコナンくんも、…私を家族と言ってくれる人。

「…○○、退院したばかりですからそろそろ」
「うん…っ、…先輩…ありがとうございます」

強い力で抱きしめられた。
それは、家族のような温かさ。
透さんが…先輩から預かるように私を抱きあげた。

「…○○、泣きすぎです」

子供のようにしゃくりあげたのは、先輩が温かかったから。

「○○、帰ってこいよ」

先輩が私に向けたその言葉は、何かを察していたのかもしれない。



/ 687ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp