【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第78章 中和剤
新しい病院着を用意してもらって、看護師さんに洗って置きましたと渡された下着には見覚えがなかった。
「これ、私のですか?」
「はい、こちらに運ばれた日に着られていたものですよ」
「…ありがとうございます」
新しい下着。
…それを見て、少しだけ思い出した。
零に抱かれるために選んで零に抱かれたくてそれを着た。
零の帰りを待っていつも以上に、期待した。
「………いつの、話?」
目が覚めたのは昨日か一昨日。多分。
時間が何度も眠ってしまったせいで時間感覚がおかしい。
日付を確認できるものは相変わらず隠されている。
シャワーを浴びながら、髪を洗ってごわつく感触に顔を歪める。
…というかこの状態で零に抱きしめられていたと思うと、急激に恥ずかしさと後悔が押し寄せてきた。
何かが引っかかる。
赤井さんの顔を思い浮かべた。彼に会ったのは、先日のはずで。
零はそれについて何も言わない。
私の状態があるからにしても…その件はひとまず終わっているような…零と私は、それについて一度話をしている?
思い出したい。
零にあんな表情をさせたままなのは、嫌だから。
誰に抱かれていてもいい。
零がそれでも傍にいてくれる。
シャワーを浴び終えて、下着を付けて部屋に戻る。
ドライヤーが見つからない。
部屋に行って看護師さんか零にでも言おう。
「おかえり、さっぱりした?」
「うん、すごく気持ちよかった」
「よかったな」
体は大丈夫か?と重ねて聞いてくるから、中和剤を打ってからは特になにもないことを伝えた。
「零、仕事は大丈夫なの?」
「大丈夫」
「ポアロは?」
「行ってる」
「……疲れてない?寝てる?」
顔色が少しだけ悪そうに見えるのは、隠し事上手な零らしくない。
「…零、こっち座って」
ベッドにスペースを作って叩けば、零がベッドに上る。
ぎし、ときしむ音が聞こえるのがなぜか恥ずかしい。
座った零に抱き着いてそのまま寝転ぶ。
無理矢理。
「寝て」
「…無理。まだ、…お前から目を離せない」
「んー……じゃあ、寝てる間だけ縛っておくのはどうでしょうか」
それで零が寝れるなら。
「そしたら、なにもできないでしょ?」
「……分かった」
確かに仮眠はしたい、と零が頷いて。
「ただ、…キスはさせて」
「え?」
「キス」
零が目を瞑る。
…ああ、…甘すぎる誘惑。
「だ、め」
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