【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第77章 後悔(降谷視点)
目覚めないことへの不安と目覚めた後の不安。
それを抱えながら、眠り続ける○○の隣にいた。
5日経って目覚めなくて薬が抜け切るかどうか、分からない。
抜け切れても、目が覚めなかったら意味がない。
俺自身、最後に寝たのはいつだったか。
…眠る○○に口づけたのは初日のみ。
それでも頬に触れて手を繋ぐ。
最初はそれだけでも体に反応があったのが、今は落ち着いていて。
少しずつ、抜けているのがわかった。
だから繋いでいる手がわずかに動いて。
痙攣、ではなく…意思をもって動くように。
「○○…?」
思わず期待した。
「……れい?」
「目が、覚めたのか」
視線だけを俺に向けて…
「うん…ごめん、寝すぎてた…?」
「馬鹿」
○○の目に、俺が映る。
「目が覚めないかと思った」
その不安を口にして…抱きしめた。
抱きしめた。確かめたくて。
ここにいる○○を確かめたかった。
「…さっきまで一緒にいたのに?」
俺のほうが変なことを言っているような目で俺を見て。
だから、何かがおかしい違和感を覚えた。
「でも、零…怪我、治ってる」
「何を言ってるんだ?」
「え?だって、さっきまで東都水族館に、いた…よね?」
“なかった”ことにしたのだ。
○○の中で。
あの東都水族館で病院にいったあの時から今日までのことを。
それが精神的なものなのか、薬のせいなのか。それは定かではないにしろ…
今はそれでいい。
「………○○、好きだよ」
「ん?どうしたの」
俺の肩に手を回して抱き返してきて…
「愛してる」
俺の言葉に返ってくる愛の言葉。
「目が覚めて、よかった」
心から、そう思って…
○○を抱きしめて泣いていた。
俺の顔を見ながらとても悲しそうな目で映して
「大袈裟だよ…」
そう言った○○に頷いて…少しだけと思いながら抱きしめる力が強まった。
「痛いよ、零」
小さく笑うその声が愛おしいと思った。
目が合えば、目を瞑り与えられると思っている口づけには気づかないふりをして医者を呼んだ。
何も問題ないと確認するまでは、○○の記憶の辻褄があわなくなることはないように。
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