• テキストサイズ

【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】

第75章 水槽


ジンが言っていた“オスが足りない”のは…誰かこの先にいるモノに抱かれるということ。

「…バーボン…」

演じる貴方でもいい…とにかく貴方に、会いたい。

「…壊れないでね」
「え?」

窓の外を見ていた私にベルモットさんが言った言葉が聞き取れなくて…聞き返せば、にっこりと笑われた。


連れて来られたのは、海辺の倉庫。
潮の匂い。
…どうしてだろう、やけにずっと零のことばかり考える。
帰らないといけないのに。
生きて帰らないといけないのに…これじゃあ、死ぬ前の心の準備みたいだと思う。
再会して、初めてキスしたことを思い出しては感傷的になるのを止めたくなる。
その中は大きな倉庫の中は整っているように見えて。
消毒液のような薬品の匂い。

「ベル、久しぶり」
「ええ」

口づけをする目の前の男女に思わず体が引いた。

「彼女かい?」
「可愛い子よ。壊さないように大事に扱ってね」
「それは彼女次第だよ」

ベルモットさんが…私を手招きするから…近づいた。
ベルモットさんと口づけした男は、白衣を着て40前後の男は清潔そうな雰囲気かつ…どこか真面目な様子。

「新しい薬があるんだ、早速試させてくれるかい?」

だから、その真面目な様子から出された言葉の意味が、分からなかった。

「依存性のものとそうでないものとどちらも試したいんだけど…依存してしまったら、それ以外の確認が難しいからとりあえず」
「あの…なんの、薬ですか?」
「自白効果のある性欲誘発剤と…」

と?ってなんだ。
楽し気に目の前に並べられた注射器を一つ一つ説明する。
何を言ってるんだって思った。
思わずベルモットさんを振り返ると、そこに姿はない…入口は締まっている。おそらく施錠されているだろうし。

「自白剤から試していこうか」

おいで、と腕を掴まれて。
逃げなきゃ、という本能だけでその手を振り払えば…

「抵抗はしないと聞いていたんだけどな?」

突然低くなる声。

「おいで」

怖い。
怖い。
怖い。
純粋な恐怖。
だから私は…甘い世界に慣れすぎた。

「いい子だ」

一度は振り払った手を…もう一度、掴んだ。

零、ごめん…帰れないかも。
私から情報が漏れるのはあまりにも多すぎる。
私がどこまで私を保っていられるか。
自我を失う前に死ぬ方法だけは考えておこう。


/ 687ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp