【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第75章 水槽
零に、会いたい。
それでも今この場では殺されないことに安心した。
…ベルモットさんが手錠を外して、私に手を差し伸べる。
「生きたいなら、掴みなさい」
「……勿論」
私はこの人を嫌いになれないのは、この…目の奥にある強い“光”。
それが蘭さんやコナンくんのことだとは…
知る由もなかったけれど。
ベルモットさんの車の中、手錠の痕が残る手首を擦る。
「大丈夫?」
「…さっき、銃を引かれる前に引き留めてくださいましたよね」
「貴女に死なれると私にも都合が悪いのよ」
「バーボンに何か弱味でも?」
「さあ」
車の中で縛られないことに少しだけ違和感というか…
「私が逃げるとは、思わないんですか?」
「バーボンの立場が悪くなるようなこと、貴女はしないわ」
その通りだったし、そのつもりでもある。
「今日はそんなに楽しみだったのかしら?可愛い下着に香水。まるで彼に抱かれるために用意されているようだわ」
「……ええ。久しぶりに、時間ができたので」
「最近家に帰ってなかった様ね」
「盗聴器が仕掛けているような部屋に帰りたいとは思えませんよ」
「それもそうね」
「バーボンの部屋には、盗聴器仕掛けてないんですか?」
「彼は仕掛けてもすぐ外すのよ」
「…まぁ、それもそういう人ですね」
やはりというか。
なんというか。
…組織の人たちは、私の存在に目を付けていた。
だからなのかもしれない。
零が、二週間ずっと家にいてもいいと言ったのは。
度を超えた束縛をしようとしたのは、そうしたいと言えばその行為自体は嫌がったとしても、そばにいることを零は知っているから。
相変わらず何も言わない癖に、私を扱うのが上手い人だと思う。
「今日、彼は」
「邪魔されると厄介だから遠出してもらってるの」
「最初から今日家に来る予定だったんですね」
「貴女がいるのは予定外よ」
「教えてくださればよかったのに」
私がいると知っていても、そんなことするとは思っていないけど。
二週間。
彼に抱かれるために我慢した。
…今日は朝から、そのことばっかり考えてた。
我ながら馬鹿だなって思うけど。
それでも…零に抱かれたいし触れられたい。
ベルモットさんに連れていかれる先がどこかはわからないけれど。
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