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【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】

第73章 同じ気持ち※裏


まな板を叩く包丁の音で目が覚めた。
寝室の電気は消えてるけど、リビングからは電気がついてるのが確認できる。
…零が帰ってきたんだな、と思えば体を起こした。

「…おかえり、零」
「ただいま…寝てて良いから、無理して体動かすな」
「大丈夫だよ…固定してるし。それよりごめんね、ご飯用意しておくつもりだったんだけど」
「安静って言われてるだろ」
「…大袈裟だって。たかがヒビ」

ピリッとした突然の雰囲気に、零の顔を見上げたら怒ってて…

「たかが?」

………言葉を選ばなかった私が悪い。

「…心配してくれてるのに、…ごめん…あの、……ごめんなさい」

喧嘩はしたくないんだと思ってすぐに謝りながら…視線が下に向かう。
…心配しなくても大丈夫だと、言うのも違うし。

「心配、かけてごめんなさい…それから…ありがとう」
「…○○、ご飯食べたら…あの時約束したこと、話してくれないか」

これ以上疑うのは嫌なんだと、零が言う。

「……わかった」
「ありがと」

とりあえず座ってろ、と言われて椅子を引いて私に笑いかける零の笑顔は、作り笑いだった。
…なんでこんな違いに気づくようになってしまったのか。
彼はそれが得意なのに。
目の前に出された料理は、体を気遣っての優しいものばかり。
いただきます、と両手を合わせて食事をして沈黙が続く。
美味しいのに、…物足りない。
優しいのに、物足りない。

「ご馳走さま。洗い物置いてて。…風呂入ってくる」

いつもなら、お互い食事を終えるまで立ち上がったりしないのに。

「零…っ、私も一緒に…入りたい」
「…ごめん、疲れてるから」
「そっか……ごめん、私こそ」

らしくない。
こんな空気。
責めるわけでも、喧嘩でもなくて…
こんな重たい空気…嫌だ。
零が風呂場に向かってシャワーの音が聞こえる。
洗い物を置いててと言われたけど、置いておけるわけもなく、洗い物を片付ける。
…どうしたら良い。
この後、どうしたら……
病院にいた時は、まだ甘い空気があったのに。
今は……
帰ったほうが良いのかな、…なんて。
話を終える前に帰ったら逃げてるようで空気が尚更悪くなるだろうし……話し終えたら、家に帰ろう。
そんなことを、思って…

寝室に向かった。


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