【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第72章 純黒の悪夢(後)
作業の先が見えてきたところで…
突然、停電が起きた。
組織が動いた、と察して体が強張る。
「こう暗くちゃ配線の見分けがつかない」
もう少しで解除できるのに、と零が目を凝らして起爆装置を見る。
立ち上がり携帯のライト機能を使い、零の手元に光が当たるように後ろから当てた。
「…ないよりマシかと思って」
「助かる」
ピンセットでコードを持ち上げて、配線の色や文字などを確認しながらコードを切っていく。
その作業を見ながら、昔教わったことを脳内で呼び起こす。
…間違いなく、零がやった方が早くて。私がやっていたら、その作業の半分に到達していたかすら怪しいものだ。
それなのに、代わろうかと言った自分が恥ずかしい。
ズズウゥゥン、と観覧車が大きく揺れた。
咄嗟に消火栓ボックスに手をつこうとして…零に引き寄せられた。
「クソォ、仕掛けてきたか!」
「零っ…!」
零が私の頭を庇うように右腕で抱え、左手を消火栓ボックスに手をついた。
「…○○、今すぐここから離れ」
「離れないよ」
零は、私を守ってくれる。
…今だって、零の腕の中にいて…幸せなのに、死ぬほど情けない。
「お前は本当…言うことを聞かないよな」
「っ…私は…っ」
黙って、と零が胸板に私の頭を押し付けて…言葉を紡ぐことを止められる。…忘れられるなら、もうとっくに忘れてる。
離れられるなら、とっくに離れてる。
揺れが大きくなり、零の腕に力が入る。
何かが落ちてくるような壊れるような音がして、ガレキと煙と共に大量の煙が押し寄せる。
その瞬間視界も呼吸も、グッと零の胸板に押さえつけられて…なにも見えなくなる。…ゴホゴホ、と咳き込む零の声。
じっと耐えるように動かない零の腕が緩んで、顔を上げた。
LEDビジョンに何かが衝突したのか、いつの間にか大きな穴が開いていて、そこから煙が吐き出されている。
「何があったのかわからないが、これなら…」
私を腕から解放して、消火栓ボックス内の起爆装置へと目を向けた。
「…いけそう?」
「あぁ」
…今は目の前のこれを片付けるのが優先で。
「集中しろ…焦らず、慎重に…そして、急げ!」
零の邪魔にならないよう立ち上がり、後ろからその作業を見守った。
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