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【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】

第71章 純黒の悪夢(前)


穏やかな海が夕暮れに染まる頃。
シャッターを下ろされた人気のない港の倉庫に、零の車が停まった。

「…赤井さん、私も連れて行ってください」
「断る」

離れた先に車を停めた赤井さんに、私が言えば即答された。
貴方にまで何かあったら、そんな気持ちを込めて赤井さんと目があって…穏やかな目で私を写す。

「必ず戻ってくる」
「…はい」

それが、零からも聞きたかった。
双眼鏡越しに倉庫の様子を、赤井さんの様子をじっと見ていた。
銃声音が聞こえる。
その度に飛び出したい気持ちを堪えて…赤井さんを待つ。
体が震えてる。
双眼鏡を握る手には酷いくらい汗が滲んでいて。
赤井さんの手には銃が構えられていてスコープ越しに倉庫を覗いていた。しばらくして倉庫の扉を蹴り開けて…走って立ち去って。
その後に倉庫から飛び出した男の姿。
…黒ずくめの、男の人。
自然と感じる恐怖に双眼鏡から目を離した。
走って戻ってきた赤井さんは、勢いよく車を走らせて…その場を去った。

「零は…っ!?」
「あとは彼が上手くやるだろう」

赤井さんは、中の様子を教えてくれた。
中には、三人の組織の人間と…零と、水無怜奈がいた。
組織側の人間は私の知っているベルモットさん。そして、資料で何度も名前を聞いて、電話をしていた零が発した名前。
ジン。
そして、資料で名前を見たことがあったウォッカ。
零と水無怜奈は、鉄骨の柱に縛られていた。
ノックリストに名前があったことから、始末するために。
…やはりキュラソーは組織に情報を伝えることができていたのか。
ジンの手によって零が撃たれる直前に倉庫の天井に吊るされたライトの根元を銃で撃ち、ライトが落下し二人を照らしていた投光器が床に倒れ、倉庫の中を暗くした。
光が再度当てられた時には、零は捕縛から抜け出した。
だが、その中から逃げられずにいた彼がまるで逃げたかのように倉庫の扉を蹴り開けて、赤井さんは戻ってきたのだという。
あとは彼が上手くやる、その言葉に心底安心した。

「…ありがとうございます、ほんとに、ありがとう…っ」

私から零を奪わないで。
この人との関係だって、零が好むわけはないし、ましてや関係を持ったことが許されるわけもない。
でも、嫌われて別れるのと、この世界から降谷零がいなくなるのは全く違う。
この国から、彼を奪わないで。
私の世界から彼を奪わないで。



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