【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第71章 純黒の悪夢(前)
『○苗字○さん、降谷さんを信じてください…!』
嫌だ。
零は、帰ってくると言わなかった。
私に、忘れろと言った。
迷っているうちに、ベルモットさんが左腕にかけたジャケットを少しずらした。
そのジャケットは、不自然にも…右腕が直角に曲がって、何かを…銃を隠しているようで。
いや、間違いなく…
零に銃口が向けられている。
私は焦って自分の持つ銃をベルモットさんに向けた。
だけど…零が、私の銃口が向けられる先に立ち、ベルモットさんを車へとエスコートをするから…
バレていた。
私が、零の指示に背いて…追いかけたことも。
…そして、ベルモットさんを殺そうとしたことも。
助手席のドアをしめて、零が運転席に向かい…車を動かした。
嫌だ。
嫌だ。
行かないで。
私から離れないで。
…別れるなら、まだ…まだ、…まだ、私自身を保っていられる。
でも…
みんなと同じように死んでしまったら…
その時に浮かんだのは、警察学校時代の友人たち。
行かないで。
走り去るその車を追いかけて…空に向かって叫んだ。
言葉にならない声を。
零を助けて。
私から零を奪わないで。
別れても良い。
一生側にいなくてもいい。
零が生きていてくれたら…
泣くことは、できない。
零はまだ死んでいない。
私は…赤井さんに通信を繋げた。
私と沖矢さんの、連絡手段であるバッジを財布から取り出して。
「赤井さん…っ、…助けて…っ」
私は、零の役に立たない。
違う…
零の望む行動はできない。
零を失う可能性があるなら、私は誰にも従わない。
『○○さん、今すぐ病院の入り口まで来れるか』
「それで零を失わずに済むなら」
走って病院の入り口に向かえば、見計らったかのように私の前に停まる赤い車。
「乗れ」
迷わなかった。
赤井さんの車に乗り込み、車が走る。
私の不安を全てを悟る赤井さんは、黙って私の頭をくしゃ、と撫でた。
泣かないって決めてるのに…
涙が、静かに頬を伝った。
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