【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第71章 純黒の悪夢(前)
泣いてはダメだ。
終わったら、嫌という程この人に文句を言おう。
終わったら…解決したら。
キュラソーを、捕まえたら。
「お前はここで降りろ」
病院の入り口で車を停められ、探偵団の子たちから話を聞けという命令。
降りたくなかった。
下唇を噛み締めて、その指示に従う。
触れたかった。
行かないで、と言えたなら…どんなに、楽だっただろう。
降谷さんは私が降りて…駐車場へと向かう。
駐車場へと視線を向けて…無意識に、足が向かう。
その時に、私は…見知った女性を見かけてしまった。
ベルモットさん。
遠目からでもわかる大きなつばの帽子をかぶったそのロングの金髪。
なんでその人が。
それは、零の正体がバレたことを表している。
降谷さんからの命令に背くことは分かっていたけれど…駐車場への足を向けた。
銃を手にして。
私に、あの人を殺せるのか。
それはわからない。
だけど…零が殺されるなら、私は…ベルモットさんへと銃を向けるしかないのだ。
車の中で電話をする零を遠目に確認する。
…電話の相手は恐らく風見さんだろう。
私に対して言った言葉と、同じような内容を彼に言うのだ。
貴方を失うなんてこと、できるわけがないのに。
少しずつ距離を詰め、物陰に隠れて零の車を見張る。
零が車から出たら…ベルモットさんが、現れた。
「バーボン。なぜあなたがここに?」
「もちろん、あの人を連れ戻すためです」
「さっきまであの子もいたわよね?」
「あの子?さて、誰のことでしょう」
「貴方のお気に入りよ」
「あぁ、…わがままを言われましてね。知り合いの子供達を迎えに行きたいと。入り口まで送りましたよ」
それは、私のことで。
構える銃が…震えた。
二人の声がギリギリ聞こえる距離。
それは、私が危ないことをしていることくらい…わかってた。
「てっきり記憶が戻る前にあの人の口を塞ぎに来たのかと…」
「何故僕がそんなことを?言ってる意味が、よくわかりませんね」
零の言葉に耳を澄ませているのに…
イヤーマイクに、無線が入る。
『○苗字○さん、撃たないでください』
風見さんの、声。
零は私の行動を見透かしていた。
『降谷さんからの命令です』
でも、だけど…!!
言いたくても、声を出すわけにはいかない。
小声でもベルモットさんなら気付くだろう。
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